相変わらずの読書三昧です。
この中に「溟い海」という作品が収録されていて、どうしても読みたいので
早速買って読んでみました。藤沢周平にとっては初期の作品のようです。
「溟い海」は晩年の葛飾北斎の姿を描いた作品です。
「富嶽三十六景」を描いて評判になり一躍人気絵師になったものの、
その後の「富嶽百景」は不評で、人気も落ち目になってきた。
そんなところへ「東海道五十三次」を描いて大評判の歌川広重が登場してくる。
この広重に対する凄まじい嫉妬心、やがてはそれが敵意にもなり、ならず者を
巻き込んで広重を襲撃しようとする・・・・・
私は北斎の「富嶽三十六景」は好きで、展覧会などにも出かけていました。
緻密に計算されたような斬新な構図には唯々感心して見入ったものでした。
天才的とも思えるようなそんな北斎が、なぜ広重の「東海道五十三次」に
殺意さえいだくような敵意を剥き出しにしたのか・・・・・?
当然のことのように次に興味が向いたのは「東海道五十三次」、その絵です。
「どんな絵なの?」、みたことがあるような、ないような・・・・・?
2~3日頭の中で燻っていたのですが、なんと我が家にその絵があったのです。
2011年から2012年にかけて読売新聞の読者サービスとして額絵シリーズ
が配布になり、それが保存してあったのでした。
横37㎝×縦26㎝あまりの複製画、全55枚のコレクション。
驚きました。これがどれも素晴らしいのです。本当に素晴らしい!
いっとき北斎の「富嶽三十六景」も霞んでしまうような感動でもありました。
藤沢周平の作品を読むとき、いつも深く心に沁みる入るのは美しい風景描写です。
今回、広重の絵に接して、そのあたりの作風の意味がわかるような気もしました。
そして、だからこそ対極的な北斎についても、内面深くまえで踏み込んで描くことが
できるとというものなのでしょう。まさに作家の力量でしょか。
「溟い海」は私にとっても発見というか、新たなものの見かたを教えてもらった
忘れがたい作品になりました。