2005年 06月 10日 ( 1 )

百 羽 の ツ ル

 子どものツルは、みんなに、ないしょにしていましたが、びょうきだったのです。ここまでつい
てくるのも、やっとでした。みんなが、すこしばかりはやくとびはじめたので、子どものツルは、
ついていこうとして、しのものぐるいで、とびました。それが、いけなかったのです。
 あっというまに、はねが、うごかなくなってしまい、すいこまれるように、下へおちはじめまし
た。だが、子どものツルは、みんなに、たすけをもとめようとは、おもいませんでした。もうす
ぐだと、よろこんでいる、みんなのよろこびを、こわしたくなかったからです。だまって、ぐいぐ
いおちながら、小さなツルは、やがて、気をうしなってしまいました。
 子どものツルのおちるのをみつけて、そのすぐまえをとんでいたツルが、するどくなきました。
すると、たちまち、たいへんなことがおこりました。まえをとんでいた、99羽のツルが、いっときに、さっと、下へ下へとおちはじめたのです。子どものツルよりも、もっとはやく、月の光をつら
ぬいてとぶ、ぎんいろの矢のようにはやく、おちました。そして、おちていく子どものツルを、お
いぬくと、くろぐろとつづく、大森林のま上あたりで、99羽のツルは、さっとはねをくんで、いち
まいの白いあみとなったのでした。
 すばらしい99羽のツルのきょくげいは、みごとに、あみの上に、子どものツルをうけとめる
と、そのまま空へ、まいあがりました。気をうしなった、子どものツルを、ながい足でかかえ
た、せんとうのつるは、なにごともなかったように、みんなに、いいました。
「さあ、もとのようにならんで、とんでいこう。もうすぐだ。」
 こうこうとあかるい、夜ふけの空を、百羽のツルは、まっ白なはねをそろえて、ひわひわと、
空のかなたへ、しだいに小さくきえていきました。
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by suirenn2 | 2005-06-10 20:18 | Comments(2)