柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺 正岡 子規
正岡子規は大の果物好き、わけても柿には目がなかったそうです。
ある年の秋、奈良に旅して、宿屋で夕飯を済ませた後、無性に柿が食べたくなった。
それで、宿の人に注文、山盛りの柿を剥いてもらいながら次々と平らげていると鐘の音が・・・・。
なるほど、誰でも知っているこの名句は、その時に生まれたのだ?
でも、この時の鐘は、東大寺の鐘だったそうです。
翌日、法隆寺の方へ出かけて、門前の茶店でまた柿を食べていた時に浮かんだものとか・・・。
つまり、実際に子規が聴いたのは夕食後の東大寺の鐘ながら、法隆寺界隈の長閑な光景が
イメージを喚起して名作の誕生になったのでしょうか。
柿はかなり古い時代から食用にされて、砂糖の乏しかった時代には大切な糖分の補給源だったとか。
平安時代の頃は、柿は菓子類に分類され、年中行事、通過儀礼など、ハレの日の食材として
用いられることが多く大変珍重されたそうです。
大方葉を落として、熟した実が青空に映えて・・・・・
そんな光景には、いかにも日本の秋といった感じで見とれてしまいます。